医療的ケア児、家族任せにしない 制度整い広がる支援、母親「私も休めるので助かる」 通学タクシーも

2022年6月18日 10:07
 日常的に医療的ケアが必要な子どもたちを支援する動きが、名古屋でも広がっています。
「こんにちは。悠斗君はリビングですか…悠斗君こんにちは」(記者)

 名古屋市名東区の中学3年生、島倉悠斗さん。家族4人暮らしです。

 悠斗さんは、赤ちゃんのころミルクを飲む力が弱かったり、歩き始める兆しがなかったりしました。

1歳の時、全身の筋力が徐々に低下していく「先天性筋ジストロフィー」とわかりました。

 今は、一日のほとんどを横になって過ごします。

 食事はのどにつまらないよう液体状にしてスプーンをなめながら少しずつ食べます。

「いける?ちゃんとごっくんして」(島倉里美さん)

 就寝中も、母親の里美さんが付きっきり。そのため、寝不足状態が10年以上続いているといいます。

「寝返り要求か、たんがからんでせきが止まらなくなっちゃって、体位を何回変えてもせきが止まらないままなので、それが朝5時まで続くといいうのが、このところ結構あって」(島倉里美さん)
 

日常的に「医療的ケア」が必要だ

日常的に「医療的ケア」が必要な子どもたち
 医療的ケア児。

 人工呼吸器の使用やたんの吸引など、日常的に「医療的ケア」が必要な子どもたちのことです。

 厚生労働省によりますと、推計で全国に約2万人いるとされています。名古屋市が3年前に実施した調査では、市内に約430人いると推計されています。

 去年9月には「医療的ケア児支援法」が施行され、本人や家族を支援する動きが進んでいます。
 

通学支援の「介護タクシー」

通学支援として介護タクシーで送迎
 悠斗さんは特別支援学校に通っています。車で片道30分ほどの距離を母親の送り迎えで通っていますが…。

 この日、悠斗さんを迎えにきたのは介護タクシーです。

「おはようございます」(看護師)

 名古屋市でも、悠斗さんのような「医療的ケア児」の通学を支援する制度を、4月から始めました。名古屋市教育委員会では、市内の小中学校や特別支援学校等に通学する医療的ケア児として、34人を把握しています。

「通学支援という制度は私たち保護者の肉体的な負担の軽減だけでなく精神的な希望になる)」(支援を要望する母親)

 支援が広がっている背景には、その必要性を訴え続けてきた保護者の声があります。

 通学の支援や、学校での看護師の確保などを要望してきました。

 制度の目的について、名古屋市教育委員会は・・・

「一番は学習保証、大人の都合でお子様が通学できないという事態は避けたいということで始めた。結果として保護者の負担軽減にもなるかなと期待している」(名古屋市教育委員会 特別支援教育担当 中谷誠 主幹)

 親の体調不良などで、学校への送迎ができない場合、連絡を受けた学校が手配したタクシーが、自宅まで迎えにきてくれます。

 医療的ケア児は、移動中もケアが必要なこともあり、普段から学校に常駐している看護師も同乗します。

「緊張したり興奮すると脈が上がりやすいのでちょっと確認をするためにはかってます。37度6分、冷たいタオル持ってきたけどあてておこうか」(看護師)

 気心の知れた看護師さんの付き添いもあり、30分かけて無事、特別支援学校に到着しました。

「子供は元気だったら学校にきて友達と過ごしたり、学んだりすることは大事なこと。調子がよければ学校に絶対に来てほしいと思う」(名古屋市立守山養護学校・岡部啓校長)
 

タクシーには看護師も同乗

「保護者の負担軽減」にも
 母親の里美さんは、通学支援制度が、保護者の負担軽減にもつながるといいます。

「タクシーが使えることになって看護師さんがついてきてくれて。悠斗も学校へ安全に通える。私も家で休めるのでとても助かります」(島倉里美さん)

 医療的ケア児の通学支援は、1年間に24日利用可能で今年度の予算はおよそ600万円。

 名古屋市は今後、医療的ケア児とその保護者への支援を充実させたい考えです。

(6月17日15:40~放送メ~テレ『アップ!』より)
 

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