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「教えない」ことで子ども達を育てる山のガッコウ オンラインで新たな出会いも 三重県桑名市

2021年8月28日 07:55
「次どうしたらいいの?」と指示ばかり仰ぐ子ども達が増えているのに危機感を感じた男性が立ち上げた山の中の小さな“学校”。実践するのは「教えない教育」です。コロナ禍で始めたオンラインで北海道の男の子との新たな出会いもありました。
工作の時間 見本は見せても作り方は「教えない」
 三重県桑名市の山のふもとに廃校となった小学校を活用した「子どもアイデア楽工」(ガッコウ)があります。

 週末や、夏休みなどの長期休暇に開校する小学生のための私塾。代表は“コウチョウ”の山上敏樹さん(63)です。

 5月に撮影した授業の様子です。

「見本を渡すから、教えないから、これをよく観察して作ってください」(山上敏樹コウチョウ)

 工作の時間、いきなりコウチョウが「教えない」と宣言しました。え?学びに来たのにどういうこと!…作るのは、手づくりの弓矢です。

「こうやってみたらさあ、斜めになっていません?どうしたらいい?」(山上コウチョウ)

 まず挑戦をさせて、失敗しそうな時にだけ、ヒントを出すんです。

「単純に『ああせい、こうせい』って教えるわけではなくて、見本をよく観察するというところからスタートするんですね。そうすると何が生まれるかというと、自分で考えて創意工夫するようになるわけですね。敢えて教えない教育を提唱している」(山上コウチョウ)
 

自分たちで作り方を考え弓矢作りに挑戦する子ども達(5月撮影)

失敗しても「どうやったらよくなるか」を自分で考える
 弓矢が出来たら、試し打ちですが…

「あれっ飛ばない、失敗した」(子ども)

 1度完成させたものの、矢が上手く飛ばない子も…。飛ばない原因も自分で考え手直しします。

 昼休み。校舎の裏山には「秘密基地」があり、子ども達の格好の遊び場です。

 ここを作ったのも子どもたち。2019年には作る様子も撮影していました。何年もかけて完成させました。

 午後からは、作った弓矢を持ち寄っての紙皿の的を狙う競技会。

 上手く当たらない子に、すかさずコウチョウが話しかけます。

「駄目だったのをどうやったらよくすればいいかな、というのがすごく大切なのね」(山上コウチョウ)
 

校舎の裏山には子ども達が作った「秘密基地」が

“コウチョウ”の前職は遊園地のアトラクション開発 「指示待ち子ども」に危機感で開校
 子どもの教育に熱心な山上コウチョウ。前職は鈴鹿サーキットで遊園地のアトラクションの開発に携わっていました。

 仕事の一環で子どもたちの生活習慣やものの考え方も研究。あることに気づきました。

「本当今の子どもたちを見ていて、『お母さん、これ次どうしたらいいの』とか、とにかく指示ばかり仰いでいる子が多かった。そういうのを目の当たりにすると、このままだと日本がどうなっちゃうのだろうと、本当に沈没するんじゃないかなあ、ぐらいの危機感を感じましたね」(山上敏樹コウチョウ)

 会社を早期退職。退職金などを使って、自分の目指す教育法を実践しようと「子どもアイデア学工」を立ち上げました。

「自分で体験することによって学びにつなげる。もっと言うと遊びながら学ぶ」(山上コウチョウ)

 こうしたやり方を広めようと、平日の午後に開校する鈴鹿キャンパスや桑名駅前キャンパスも開設、参加する子どもが徐々に増えていっていた矢先。新型コロナの影響がガッコウを直撃しました。

「やっぱりコロナが広まってからは参加者は減りました」(スタッフ)

 収入は参加者が支払う授業料だけ。コロナ前の3分の2に落ち込んでいます。
 

オンラインで龍誠くんと話す山上敏樹コウチョウ

コロナ禍で始めたオンラインで新たな出会いが
 そこで山上コウチョウ、マンションを改装しオンラインスタジオに…。この日は、幼稚園と繋いで工作の教室を行いました。

 このオンラインで、これまでにない出会いも生まれました。

「聞こえる?」(オンラインで龍誠くんと話す山上コウチョウ)

 北海道で暮らす猪股龍誠くん。心に傷を負っていました。

「何かこう、みんなの前で発表しようとしたら、ばかにされて壮絶ないじめにもあったそうなんですね。もう本当に心を閉ざして、もう自分の意見を言わなくなったそうですね」(山上コウチョウ)

 北海道室蘭市。龍誠くんは小学4年生。小さい頃から恐竜や昆虫が大好きです。

 小学校に入って間もない頃、大好きな恐竜の世界を描くと、同級生から「気持ち悪い」「化け物」といった言葉を言われるようになりました。

「夜中にもう足と手をバタバタしながら、『もうやだ、行きたくないよ、もうやめてよ』、っていうの、寝てるときに…」(母の猪股さとえさん)

 登校できなくなった龍誠くんは転校。そんな時に、インターネットで「子どもアイデア楽工」を知りました。

「それは何の絵か教えてもらってもいい?」(山上コウチョウ)
「このお星さまは“なかよし星”っていうお星さまです」(龍誠くん)
「すごいいい発想しているな。龍誠あいかわらず素敵だわ。うんうんうん」(山上コウチョウ)

 コウチョウから見れば、個性は魅力。とことん褒めます。

「オンラインとはいえ、『龍誠すごいじゃないか』って、何の気なしに描いたあの絵がそこまで言ってもらえたっていうのが、もう本当に彼の中の1番の自信につながったんですよ」(龍誠くんの母、さとえさん)
 

秘密基地から降りる龍誠くんを見守る山上コウチョウ

絵をバカにされ傷ついていた北海道の小学生 念願の山のガッコウへ
 あの学校に行ってみたいという龍誠くん。その願いをかなえようと母のさとえさんは6月に体験入学させることに。山上コウチョウは空港まで迎えに行きました。

 早速、山のガッコウへ。

「めっちゃうれしいです!来られて」(龍誠くん)

 朝一番は体育の時間。最初は緊張気味だった龍誠くん。すぐに溶け込み小さい子を手助けする場面も。小学校では見せなかった笑顔。

 続いてコウチョウと秘密基地へ。龍誠くんにつきっきりのコウチョウ。その子にとって一番良い接し方を探ります。秘密基地の2階から木をつたって降りる龍誠くんずっと声をかけ続けます。

「手をゆっくり、手をゆっくりOKOK。へへへ、よし、うまくいった!」(山上コウチョウ)
 

廃校を活用した「子どもアイデア楽工」(三重県桑名市)

「夢を言葉にして表現することが現実になる」
 絵を書く時間。テーマは「未来にあったらいいもの」。出来上がったらコウチョウに発表です。

「タイトルは砂鉄を集めていろいろなものを作る装置です」(龍誠くん)
「すごいなあ!」(山上コウチョウ)

 龍誠くんが考えたのは、夢の装置。

「すごいね、まあ、素晴らしい!」(山上コウチョウ)

「前に学校に行っていたときは、いじめにあっていたものですから、自分が夢を語るとか、そういうのを拒むような気持があったんですよね。それがコウチョウと出会うことで『夢をどんどん言葉にして表現していくことで現実になっていくんだよ』、っていうのを教えていただいて、なんか本当に叶っているから、本当に感無量ですね」(龍誠くんの母 さとえさん)

 龍誠くんの体験入学。あっという間の2日間でした。

 北海道に戻った龍誠くん。家でも山のガッコウで習ったロケットで元気に遊んでいました。

「雰囲気が違うっていうか、目がキラキラしているっていうか、よっぽど楽しかったんだろうなって思っています。良かったと思っています」(龍誠くんの父 栄樹さん)

 山の中にある小さなガッコウ。ここは子どもたちの輝きが増す場所です。

「わくわくするものを考えているものですから、三重県という枠から飛び出すチャンスをいただいたってすごく感じていますね」(山上敏樹コウチョウ)

(8月26日 15:40~放送 メ~テレ『アップ』より)
 ※動画左の気象情報は8月26日の放送時のものです
 

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