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町工場の女性社長「くだらないものグランプリ」をきっかけに福祉の世界で「役立つ」ものづくりに挑戦

2021年7月24日 14:00
 町工場の職人が「くだらなさに思わず笑ってしまう製品」を作り技術や発想を競う大会に出品した愛知県の女性社長。きっかけは息子のいたずら防止でしたが、自ら強い思いを持つ福祉に役立つ製品にしようと改良に取り組んでいます。
開発のきっかけは2歳の息子のトイレットペーパーのいたずら
「カラカラカラ…」(トイレットペーパーをどんどん引き出す男の子)
「もう…最悪!」(お母さんの声)

 どんどん伸びるトイレットペーパーは、2歳の子どものおもちゃに早変わり。でも…後片付けは大変!

 そこで生まれたのが、このグッズ。ロールの芯と紙の部分を鉄の棒で挟んで、回らないようにしてみると…棒より先のペーパーは千切れますが、それ以上は引き出せません。

 効果はバッチリ。2020年11月に愛知県で行われた「くだらないものグランプリ」でのプレゼンの一場面。会場で様子を見ていた人たちに、笑顔が広がりました。  

「一番困っているトイレットペーパーのいたずらを止めることはできないか、ということで、この商品を作りました」(マルハチ工業社長 田中好江さん)
 

マルハチ工業社長 田中好江さん(36)

亡くなった父の跡を継ぎ町工場の社長になった女性
 ユニークな製品開発を支えるのは、長年、ものづくりで培った確かな技術。

 実は去年初めて開催されたコンテスト「くだらないものグランプリ」への出品をきっかけに、商品化に向けた動きがスタートしました

 チャレンジを続ける町工場(まちこうば)。ものづくりに情熱を燃やす社長の女性には、「福祉」に対する秘めた思いがありました。

 愛知県一宮市のマルハチ工業。1954年の創業で自動車部品など金属製品の製造・販売を手掛けています。

 従業員は7人。田中好江さん(36)は、病気で亡くなった父親の跡を継いで5年前に社長となりました。2児の母でもあります。
 

トイレットペーパー“引き出し”いたずらを防ぐ「とめこさん」

大会の様子をテレビで見た人から問い合わせが何件も
 コロナ禍で新たな挑戦がしたいと、去年参加した「くだらないものグランプリ」。 町工場が持つ技術で、ユニークなオリジナル製品を作り、披露する大会です

 好江さんが作ったのは「とめこさん」。トイレットペーパーで遊ぶのが大好きな、2歳の長男の皓大くんのいたずらが、開発のきっかけとなりました

 残念ながらグランプリには選ばれませんでしたが、思いがけない展開が待っていました。

 大会の様子をテレビで見た人から「とめこさんをぜひ使ってみたい!」と問い合わせの電話が何件も入ったのです。

「すごい貴重な経験ですよね。人生に何度もないだろうな。なんか信じられなくって。だって福祉の関係のものを鉄で作るなんて、まずないじゃないですか」(田中好江さん)
 

「ほたる学園」で「とめこさん」を試してもらう好江さん

障がい者施設に持ち込むも実用化には課題が
 「とめこさん」を手に、好江さんが向かったのは、岐阜県美濃加茂市。発達障がいや知的障がいがある子どもたちが放課後、過ごす施設「ほたる学園」です。

「お子さんがトイレットペーパーでずっと出し続けて遊んでまして。それをだめだっていうふうに注意するよりも、まずは環境で整えたいなって」(ほたる学園 美濃加茂 児童指導員 堀美帆さん)

 施設に通う子どもたちの中にも、トイレットペーパーを引っ張りだしてしまう子がいます。

 試しに「とめこさん」を装着してみると…効果はありましたが、同時に課題も見つかりました。

「安全性ですね。もう少し使いやすさがあると便利だと思います」(ほたる学園 堀美帆さん)
 

「くだらないものグランプリ」でプレゼンする好江さん(2020年11月)

 要望のひとつひとつを聞き取っていく好江さん。「くだらないもの」が「役に立つもの」へと変わっていくのを確信し、商品化を決意した瞬間でした。
  
「問題は色々あるんだなと思って。ほんの一部をただ見ただけであって、もっといろんなことが、困りごとがあることがわかって良かったです」

 自分たちが持っている技術を福祉の分野で生かしたい…そう好江さんが強く思う理由は、家族の存在にありました。


 

好江さんと母親の悦子さん(左)

障がいのある母を持つ好江さん「サポートしてくれる方に向けた商品を作りたい」
 好江さんの母、悦子さんには知的障がいがあり、昔から様々なハプニングがあったと言います。

「母親はそういうものだと思ってたんですけど、大人になるにつれて、あっ違うんだって。色んな珍事件がうちはあったんですけど、とにかく電化製品が壊れるんですよ。洗濯機とか数知れず壊れて、母は洗剤の入れる量がわからないから、粉の洗剤だと箱の半分ぐらい入ってたりとか、泡がワワワってなったりとか」(田中好江さん)

 普段はグループホームで生活する悦子さんは、月に数回、好江さんの家に来て、一緒に過ごします。気づけば、母の姿を自分の仕事に重ねるようになっていました。

「本当に今までずっと願ってた。母親をサポートしてくれる方たちに向けた商品がもしかして作れるんじゃないかという、思いもよらぬチャンスというか機会をいただいて、本当に感謝しかないんですけど。できることがあるんであれば何でもやりたいなと、今、そういう思いでおります」(田中好江さん)
 

マルハチ工業で改良について相談する好江さん

設計を根本から見直すことに「ものづくりって難しい」
 くだらないものグランプリから2カ月。好江さんは、問い合わせがあった施設に「とめこさん」を少しでも早く届けたいと、改良を重ねていました。

 これまでは、主に取引先からの設計図通りに部品を作って納品してきました。実際に使う人のことを考えて、ゼロから製品を作り出すのは初めての経験です。

「ものができるのって、すごく不安なんですよ。できるまでって本当にちゃんと設計どおりにできるのかだとか、納期もそうですし、ものづくりって簡単なようで難しいんですよね」(田中好江さん)

 試行錯誤を続けた結果、設計を根本から見直して、全く別の形に作り替えることにしました。

「使ってもらう人たちの力になるものじゃないと作る意味がないなと思って、今の既存の形はもうやめて、これから使ってもらう人たちのために、役立つものにちょっと切り替えようと思って」(田中好江さん)
 

生川製作所が作った「棒アイスを2等分する機械」

アドバイスを求めたのは「くだらないものグランプリ」のライバル会社
 「とめこさん」は鉄の部品が飛び出していて、このままではケガにつながる恐れがあります。どうすれば、解決することができるのでしょうか。

 好江さんがアドバイスを求めたのは、あの「くだらないものグランプリ」で争った、 いわばライバルの会社。板金の加工技術に定評のある生川製作所でした。

 生川製作所は「くだらないものグランプリ」では、棒アイスを2等分する機械を出品していました。
 

改良型「とめこさん」の設計CG

安全性がアップした改良型「とめこさん」
 これまでの「とめこさん」は、直接取り付けるタイプのため、ペーパーを外して丸ごとトイレに入れてしまうようないたずらには対応できませんでした。

 そこで、改良型では、金属の枠を壁に固定することにしました。赤いレバーを動かしてペーパーホルダーのふたを押さえ、引っ張ると紙が切れるようにしました。これなら、安全に使ってもらえます。

「ものづくりって日々悩んで、最初にとめこさんを思いついて、次にブラッシュアップしたものを我が社なりに作ったものがうまくいかなくて、それで次の構想が出てこないという時に1番悩んだんですけど、こうやって周りの企業さんが助けてくださって、また一つ形になったものを見て、こみあげてくるうれしさだったり、更に良いものを作っていきたいなと、今また思っております」(田中好江さん)
 

改良型「とめこさん」

「町工場って楽しいなって思ってもらえるようなものづくりを」
 少しずつ、着実に、ゴールが見えてきました。まだまだブラッシュアップは必要ですが、新たな試作品を見てほしいと、「とめこさん」に最初に興味をもってくれた障がい者施設に向かいました。約5カ月の訪問です。

「商品開発の方が思うようにはいかずに、行きついたのが今まだ未完成なんですけど、こういったものになりまして」(田中好江さん)

「私たちにしたら、くだらないものではなく、あると便利なものっていう風に感じまして、トイレットペーパー以外にも便利なものを開発してくださったら、私たちもありがたいなっていう風に思います」(ほたる学園 堀美帆さん)

 作っては悩み、相談しては浮かぶ新たなアイデア。好江さんは改めて、ものづくりへの情熱を感じています。

「ものに気持ちを乗せれるような、ものづくりの提案をこれからもできたらいいなと。それが夢になり、子どもたちにもそんな母親の姿を見せていって、中小企業っていいなって、町工場って楽しいなって思ってもらえるようなものづくりをやっていきたいなと思っています」(田中好江さん)

(7月21日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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