「コロナになったら来るなということか」退院後、会社から離職票が届く 感染した夫婦が闘った半年間

2021年5月15日 08:00
「退院したからバンザイではない」…去年、新型コロナに感染した夫婦の、その後を継続取材しました。今も続く後遺症。長年勤めた会社から突然届いた『離職票』。激動の半年間です。
退院から半年 夫は息苦しさ 妻は嗅覚障害に今も苦しむ
「ハァ…ハァ…」(風呂上がりの脱衣所で息切れするAさん 1月)
「息苦しさと頭痛がすごかったですね。風呂へ入ると、酸欠状態になってしまう」

 愛知県内に住む、Aさん夫婦(夫57歳 妻43歳)

 日頃から消毒をまめにするなど、対策に気を配っていましたが、去年11月下旬、夫婦ともに新型コロナに感染しました。

「あんなに(対策を)やっていたのに、なんで僕がと本当にショックでした」(Aさん)

 妻は軽症、Aさんは肺炎の疑いがあるとして2人とも入院し、10日ほどで退院したのですが…

「退院したからバンザイではないというのが現実にあるんだと思いました」(Aさんの妻)

 待っていたのは、後遺症と闘う日々。

 時折、呼吸が苦しかったというAさんは、血液中の酸素飽和度を測定する機器が手放せなくなりました。そして、軽症だった妻には、嗅覚や味覚に障害が。
 
 国立国際医療研究センターの調査では、退院したコロナ患者の76%近くに後遺症が確認されたということです。退院から半年。Aさん夫婦は、今も体の不調に悩まされているといいます。

「この間も(風呂に)温度を上げて入ってみたら、やっぱり息苦しくなって、フラフラになっていたので。まだ完全には治っていない」(Aさん 5月)
「私はまだ嗅覚が完全ではないです。朝起きた時に好きなコーヒーをいれても、まだ匂いがわからないですね」(Aさんの妻 5月)
 

会社からAさんに送られてきた「離職票」など

約10年勤めた会社から突然届いた離職票「訳がわからない」
 さらに2人を苦しめていたのは、コロナの後遺症だけではありませんでした。

 今年1月。Aさん夫婦2人が向かったのは、名古屋のハローワーク。その訳は…

「コロナの影響で、会社からいきなり離職票が送られてきて」(Aさん)

 約10年間勤めてきた製造業の会社から、退院後に送られてきたという「離職票」。そこには、見覚えのない自分のサインと押印が。

「訳がわからないなと。そういったものが成立するのかどうか、それも含めてきょうは(ハローワークに)相談に行ってきます」(Aさん)
 
 離職票に添えられた文書には「コロナ禍で自己都合の退職」という記載も。

「体を休めて元気になったらまた戻ってくるよう、しばらくは休んでほしいと。それが『休職扱い』なのか『退職』なのかがわからないから、調べて連絡しますと(社長が言っていた)。社長からの連絡を待っていたんですけど、ずっとなくて」(ハローワークの窓口に相談する妻)

「急に離職票が届いたという話。まずこの離職が、『解雇』なのか『自己都合』なのか、という争いが起きていると思います」(ハローワークの担当者)


 

ハローワークに相談に訪れたAさん夫婦(1月)

会社側は取材に「一度退職して体を休めた方がいいと…」説明
 ハローワークによると、離職票とは失業給付金を受け取るために必要な書類。本来であれば、“退職が決まった後”に発行されるものです。さらに気になるのが、会社側が記した「自己都合」という言葉。

「(自己都合とは)会社都合ではない自分の都合で辞めるものになりますが、病気やケガによって“自ら身を引く”形になれば、自己都合で離職理由が記載されるケースが多いかと思います。(手当の)所定給付日数というのが、自己都合で辞めた場合と会社都合で辞めた場合で異なってきます。会社都合の方が手厚い給付になります」(ハローワーク名古屋東 南谷元尚 次長 6日)

 Aさんによると、ハローワークが会社側に聞き取りをした結果、Aさんのケースは「会社側の都合で退職を余儀なくされた」と判断されました。

 ではなぜ、こうした形で退職を伝えたのか。メ~テレが、Aさんの勤めていた会社の社長に事情を聴くと…

「弊社には休職扱いをする規定や予算がありません。加えて本人には、コロナだけでなく糖尿病などの持病がありました。それならば一度退職して、体を休めた方がいいと伝えたんです」(Aさんの会社の社長のコメント)

 

退院後に出社した際の対応が忘れられないと言う

出社すると、すでに名札は外され…会社の対応に怒り「戻ることはない」
 社長は「Aさんに療養してもらうため自己都合での退職とした」と説明。「元気になれば戻ってくればいい」とも話しました。しかし…

「本当に、かなりはらわたが煮えくり返っていました」(Aさん)
 
 Aさんは、退院後に初めて出社した際の会社の対応が、忘れられないと言います。

「『ロッカーを空けてくれ』と。げた箱はもう名札が外されていました。そこまでされたら『コロナになったから来なくていいよ、今すぐ引き揚げてくれたら良かったのに』と言っているようなものじゃないですか」(Aさん)

 コロナ感染者に対する“差別”のようにも感じたAさん。一連の対応について、社長から届いた手紙には…

「私はこの際、抱えている疾病をなるべく改善して、再起に繋げることを提案したつもりです。そこで、最善と考えたのが失業です。ロッカーに関して、不適切な対応があった件は、申し訳ありませんでした」(社長の手紙より)

 社長は、メ~テレの取材に対しても、「段取りは本人に伝えたつもりだったが、説明不足や食い違いがあったのかもしれない」と説明しました。

 長く、つらい後遺症と闘いながら、勤めていた会社の対応にも、怒りと疑問を感じているAさん。「元の会社に戻ることはない」と、意思を固めました。
 

涙ぐむ妻に声を掛けるAさん

コロナがきっかけで仕事失った人は全国に10万人超
「コロナで仕事をなくすのかもしれないけど、それでめげているんじゃなくて、逆に新しいことをチャレンジする時間を、チャンスをもらったと思って前向きに頑張ってみたい」(Aさん 1月)

(涙ぐむ妻に)「…泣いとったら負けたことになるぞ」(Aさん)

「コロナに感染しただけでもつらかった。仕事がこういう状態になり、またつらい思いをしないといけないのが、主人を見ているとつらかったし、私もすごくつらかった。会社に対して悔しさがずっと今でもある。でも、明るく前向きでいる主人を見て、良かったなと思います。これは、ある意味ほっとした涙です。ね。頑張ろう」(Aさんの妻)

「頑張ろう」(Aさん)

 愛知でも3度目の緊急事態宣言が出されるなど、いまだに感染拡大が収まらない新型コロナ。厚生労働省の集計によると、2020年2月以降、コロナがきっかけで仕事を失った人々は、全国で10万人を超えました。

「これだけの人数が感染しても、まだまだ冷たい目で見られるし、下手すると僕らみたいに仕事がなくなるかもしれない。せっかくだいぶ体も良くなってきたので、笑顔で前向きに生きていこうと思っています」(Aさん 5月)

 Aさん夫婦が、この半年間で直面した厳しい現実。それは、いつ誰の身に降りかかるか分かりません。今もAさんは、新たな職を探し続けています。

(5月12日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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