自治体首長のハラスメント問題、なぜ相次ぐ? 専門家は「組織の規模と世代間の認識違い」を指摘

2024年4月24日 19:32
愛知・岐阜などで相次ぐ、自治体トップによる「ハラスメント」問題。防ぐ手立てはあるのでしょうか。
 ここ最近、自治体トップによる“ハラスメント”が次々と問題化しています。

 岐阜県の岐南町では、背後から抱き着くなどの少なくとも99件のセクハラ行為や不快な言動、パワハラ行為などが認定され、小島英雄前町長が辞職しました。

 また、愛知県東郷町では、井俣憲治町長によるハラスメント疑惑が大きな問題に。

「お前らの脳みそは鳩の脳みそより小さい」「育休を1年取ったら殺すぞ」といった発言や、机の側面を蹴るなどの行為を「ハラスメント」と認定する調査報告書を、第三者委員会が提出しました。
 

名城大学 都市情報学部 昇秀樹 教授

問題を防ぐ手立ては──
 地方自治に詳しい名城大学の昇秀樹教授は、自治体で相次ぐハラスメント問題の背景に「組織の規模と世代間の認識違い」があると指摘します。

「町役場は組織が小さくて、町長と職員の距離が近いからハラスメントが起きやすい。県庁や市役所は組織が大きいから首長と職員の距離は遠く(ハラスメントが)起きにくい。(若い人は)小・中・高で『ハラスメントはよくない』と学校教育の中で学んでいる。60~80代の人は(ハラスメントはよくないと)学校で学んでいない。『20世紀はやっていたのに、なぜ今やってはいけないのか』という高齢の町長は少なくないのではないか」(名城大学 都市情報学部 昇秀樹 教授)

 こうした問題を防ぐ手立てはあるのでしょうか?

「目安箱を設けても町村長が見るんです、町村長が決断するんです。意見を書くと左遷させられることもある。第三者に決定権をもってもらうような仕組みを構築しないと、告発したものが馬鹿をみる結果となる。5ヵ町村、10ヵ町村の共同で1つの第三者委員会を設置するのがいいと思う」(名城大学 昇秀樹 教授)
 

名城大学 都市情報学部 昇秀樹 教授

議会の取り組み例は──
 自治体トップの問題だけではなく、住民を代表する立場の議会議員の間でも、ハラスメントを「止める」役割が機能していないと昇教授は指摘します。

「本来は、議会がチェックすべきなんですよ。議員が『町長こういう声が上がっているのでおかしい』と議会がチェックすべきだけど、日本の地方議会は機能していない。(町村議員の)なり手が少ない、価値観が同じ人が議員になる。議会の中でハラスメントが起こっても誰も問題視しない、告発しない」(名城大学 昇秀樹 教授)

 自治体のトップによるハラスメント行為を防ぐためには、議員と職員との間でもハラスメントを起こさないという意識が必要だと指摘する、昇教授。
 

四日市市 石川善己 市議

「条例」でハラスメントを防ぐ
 三重県四日市市では、おととし、市議と職員や市議同士の間でのハラスメントを防ぐために、「条例」を定めました。

「四日市市としては一つの抑止力として、全国的に出てきているハラスメントに自制をかける意味で、制定をする必要があるのではということを議員の中で話して、やっぱり制定していくべきだよねと」(四日市市 石川善己 市議)

 四日市市は、この条例により「議員、職員ともに条例を意識して業務に取り組めるようになり、職員も安心して業務を行えるようになった」としています。

「なかなか『それがハラスメントになる』という捉え方ができていない。この程度はハラスメントじゃない、という感覚の議員も中にはいたので、改めてこういうことについては、ハラスメントに該当する恐れがあると認識していこうという思い。色んな意味で意識を持てるのかなと感じているので、制定したことはプラスだと思っている」(四日市市 石川善己 市議)

 このように「条例」でハラスメントを防ごうという動きは、いま全国に拡大しているといいます。

「ハラスメントの防止・根絶に関する条例を制定する自治体が、最近特に増えています。特に令和4年から増え始め、去年はかなり数が多くなっている。私たちはハラスメントをやらないんだ、起こさせないんだという強い意志を住民に対して示している。それが一つの効果があるんじゃないか」(地方自治研究機構 井上源三さん)
 

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