名古屋テレビ 放送番組審議会だより

このページは「放送法」および「放送法施行規則」に基づき名古屋テレビ放送の放送番組審議会の議事の概要をお知らせするページです。
名古屋テレビ放送の放送番組審議会委員は8名で、会議は毎月1回、年間10回開催予定です。放送番組の内容をはじめ、放送に関する全般的な問題についてご意見を伺い、番組制作の参考にさせていただいております。
名古屋テレビ放送では、放送番組審議会でのご意見を、毎月第1日曜日の午前5時00分から放送する「メ~テレオンブズ」の中でもご紹介しています。どうぞご覧ください。

<2022年1月分>

第630回 名古屋テレビ放送番組審議会

開催日
2022年1月11日(火)
参加者
(敬称略)
  • 委員長:五藤義徳
  • 副委員長:村田陽子
  • 委員:神田真秋、長山智香子、伊藤久德、野々上いり子、奥田太郎、照屋エイジ

議事の概要

(1)業務報告

  • 社長挨拶
  • 2021年年間視聴率報告

(2)審議テーマ

  • 『メ~テレドキュメント 東京の日の丸』(2021年11月21日(日)10:38 ~11:50放送)
  • その他

委員の主な意見です。

  • 国籍の問題とともに、ジェンダーの問題も大きかったと思う。エブリンさんが成長するなかで、ボーイッシュな髪型に変えたりして印象が変わった。国籍、性別などの属性を彼女がどのように受け止め、自身のなかでどう折り合いをつけたのか。最終的に自分のスタイルを身につけたプロセスを、もっと知りたかった。
    日本と異なる国籍を持つ人を、良い人と悪い人に二分化し、社会は前者を受け入れて、後者を排除する。日の丸を掲げて戦ったことが、二分法の象徴として受け止められる危険性もあったのではないか。
  • 13年間の長期取材の成果を、一つの番組にうまくまとめている。エブリンさんが社会人になってからオリンピックに出場するまでのシーンが、やや少なく感じた。アイデンティティーがテーマであることを強調するため、番組全体でバランスを意識した結果なのだろうか。
    また、「自分は何人だと思うか」という質問が何回かあった。国籍意識を聞き出すストレートな問いかけだと思うが、唐突感があった。こうした言葉遣いを、視聴者がどううけとめたか、気になった。
  • エブリンさんが、いろいろな壁に直面し乗り越えながら、自分はどういう存在なのかを気づいてゆく成長の物語だ。国籍とは何か、彼女が気づく過程を描くことで、視聴者も気づかされたのではないか。
    「自分のことを何人と言いたいですか」という質問があった。自分とは何か、自分という存在をどう考えるのかといった問題は、時間をかけて熟考していくものだ。番組制作上は攻めた質問だったと思うが、思春期の取材対象者に対する問いかけとして、視聴者はどう受け止めただろうか。
  • いくつかの英語の会話に翻訳字幕をつけていなかったが、喋っている本人の表情、声や間の取り方に集中して見ることができるので、良かった。エブリンさんの笑顔の変化は、非常に印象的だった。中学生の時の少し戸惑った笑顔にはやや硬さが感じられたが、社会人になってからの笑顔には自分の内面から出てくる自信を感じ取ることができた。
    エブリンさんとフェアに付き合っている人たちばかりが描かれていた。あえて言うと、日本の社会に順応できる外国人、それを受け入れる日本人こそ素晴らしいというメッセージになってしまったかもしれない。
  • はじめに国籍問題が色濃くあって、その後、女性アスリートの成長の記録としての色彩が強くなって、番組のテーマが変わった。メダル獲得というハッピーエンドとなったがゆえに、むしろ日本で生きてきたエブリンさんの苦悩が画面から見えづらくなったように思う。
    「東京の日の丸」というタイトルに違和感があった。番組の主題は、一家が受け止めた問題、外見上の問題と偏見差別、それに傷つき苦悩する人々の心の葛藤にあったと思う。
  • 国籍変更、オリンピック出場などのいろいろな出来事を、エブリンさんがどう受け止めたのか。彼女が自らの言葉によって語り、内面的にどのように成長して行ったのかを、節目ごとに記録した成長物語として描かれていた。 「自分が何人だと思いますか」という質問は、アイデンティティーというテーマを描くうえで、制作者としてはどうしても質問したいという思いだったのかもしれない。
  • 番組は、エブリンさんが東京オリンピックに出場してメダルを獲得するまでのサクセスストーリーではないと思う。視聴者が国籍とは何かを考える、一つのきっかけとなる番組だ。中学生が国際試合に出場するためには、日本国籍を得て帰化する必要があるということに、あらためて国籍という壁の高さを感じた。
    日本に帰化が認められて喜ぶエブリンさんと、一方で娘のために日本の国籍を選ばなくてはならなかった母親の表情が印象に残った。
  • エブリンさんの母親の「人と違うところを悲しむのではなく、喜びを持って最大限に生かしなさい」という言葉は、アスリートとしてだけではなく、人としての成長を願う母親からのメッセージで、とても印象に残った。
    国籍を越えて日本の社会で一緒に生きる人々、そのなかで他人との違いに悩む人たちに、ぜひ見てもらいたい番組だと思う。

局側は

  • 「自分は何人だと思うか」という質問は、意図的にしたものだ。内容や聞き方について、批判を受けることも想定していた。長期取材を通して同じ質問を続けていて、今回彼女から「ボーダーレスだと思う」という回答を得た。質問に答えるエブリンさんの表情や受け応えなどの変化を踏まえ、質問と回答の両方のやり取りを放送で使うことにした。
  • 「東京の日の丸」というタイトルは、エブリンさんにとって、オリンピックの表彰台から見た日の丸には、さほど意味をもたなかったのではないか、という考えから付けた。ただ、アイデンティティーという番組テーマからすると、タイトルの意図が伝わりにくかったかもしれない。
  • アスリートとして活躍したエブリンさんと、エブリンさんのアイデンティティーを、番組全体のなかで、どのようなバランスで構成するかは大変悩んだところだ。一番描きたかったのは、アイデンティティーの部分だった。

などと答えました。

(3)次回開催予定

開催日時:2022年2月8日(火)16時~