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2016年5月30日(月) あさ9:55~10:51

しおりの戦後71年~加害の記録は残されず~

日ごろニュースを伝えているメ~テレの鈴木しおりアナウンサー(当時31)にとって、戦争は「遠い過去の出来事」だった。果たしてそうだろうか。2015年は戦後70年の年だった。戦争に纏わるニュースが増えることが想像されたこの年、鈴木アナウンサーは、最も身近なところから、あの戦争について調べることにした。

7年前に亡くなった鈴木アナウンサーの祖父には、左腕の下腕がなかった。教えてくれたのは「戦争で切った」ということだけだった。祖父が左腕を失った理由を探ることにした鈴木アナウンサー。
叔父の家に残されていた写真から所属した部隊は分かったものの、どこで何をしていたのか、叔父たちも知らされていなかった。

戦争中、日本軍には軍人一人ひとりの所属部隊や任地などを記載した「戦時名簿」というものが存在した。軍人恩給の支給対象者は、この「戦時名簿」をもとに選定されてきた。鈴木アナウンサーは、「戦時名簿」を保管している県に問い合わせたが、祖父の戦時名簿が残されていないという。担当者に聞くと、終戦の直後、軍部の命令によって多くの戦時名簿が焼却処分されたのだという。

鈴木アナウンサーは民間人が作った戦記などを探し、祖父の戦争を辿る中で、ある現実に気付く。「敵を殺した記録が残されていない」。終戦時に内務官僚だった奥野誠亮元法務大臣を訪ねると驚くべき答えが返ってきた。「ポツダム宣言の内容を見て、戦犯を作らないために処分を命じた」と。そして、祖父をはじめ、戦争を生き延びた人たちは、なぜ戦争について語ろうとしなかったのか。彼らが口にする「やましさ」の正体とは。

終戦から71年。「未来に向けて伝えられる戦争」は、あの戦争の実態を映し出していけるのだろうか。1年間に渡る取材から描き出す。