2010年5月28日(金) 午前10時51分~11時45分放送
 
被爆国に問う ~切り捨てられた残留放射線~
 
スタッフのつぶやき
 
ディレクター 安藤則子

「原爆投下後の広島や長崎に、救援活動や家族を探すために入った人の中にも、原爆症で亡くなった人がいる。」被爆者の証言集には、そうした実話が収められています。だから、原爆の放射線はじわじわと長く人を傷つけるものだと、私は思ってきました。ところが、原爆症認定集団訴訟の取材を通して、国が全く逆の考え方をしてきたことを知りました。爆発から1分以降の残留放射線に影響はないとして原爆症の申請を却下し、法廷では、被爆者を指して「ほとんど被曝していない」とまで主張しました。
この発言には驚き、内心、怒りを感じました。被爆者の証言の中に真実を探す姿勢が、国になかったからです。

残留放射線の影響を公式に否定したのは、原爆を開発したアメリカです。アメリカは、原爆投下前に残留放射線のリスクを知りながら、自国の兵士や市民をも核実験で被ばくさせました。そして、その核の傘の下に日本はあります。

今回、否定の裏側を知りたくて、アメリカを取材しました。アメリカでは、元国防長官から核実験を随行した科学者にいたるまで、カメラの前での証言を拒みませんでした。ところが日本では、前厚生労働大臣、官僚、国側の科学者の全てが「多忙」を理由に取材を拒否。私の力不足ではありますが、忸怩たる思いでいます。

原爆症認定集団訴訟は、被爆者側の全面勝訴で幕をおろそうとしています。訴訟は、60年余りの時を経て、残留放射線の問題をよみがえらせました。その影響を認める新しい発見もなされています。しかし、まだ残留放射線の多くが未解明です。「国は今まで何をしていたのだ」と被爆者が番組の終わりで怒ります。「日本が認めないから世界が認めない」核実験による残留放射線の被ばく者は、世界にいます。その影響を明らかにしていくことは、被爆国の被爆国たる役割ではないのでしょうか。

 
 
 
放送内容について