2006年5月31日 25時43分~26時38分放送
 
ふるさとの記憶
カメラばあちゃんの伝えたかったこと
 
スタッフのつぶやき
 
ディレクター 海老名敏宏

 増山たづ子さんと出会ってから16年になる。Let'sドンキホーテで何度も遊び、いろんな暮らしの知恵も教えていただいたし、それをきっかけに、いくつものドキュメンタリーを作った。家にも泊まっていただいたし、山形には2度も旅行をした。増山さんの訃報は耳を疑った。10日前にも長々と電話でお話させていただいた。話は徳山の人たちの話。何度も聞いた話だけれど、それでも何かを訴えたかったのかもしれないと思った。
 私は、増山さんの本当に伝えたかったことを伝えてきたのだろうか。ただただひょうきんな姿の増山さんを記録してきたに過ぎないのかもしれない。そんな思いが突然湧いてきた。「増山さんが本当に伝えたかったもの?」即座に答えられない自分がいた。
 増山さんは、出会った人たちに実に数多くの写真と手紙を送っていた。もちろん、私にも何通も来ている。筆で何枚もの便箋を重ねる。増山さんからいただいた写真だけで何冊ものアルバムがある。
 ふるさと徳山を愛しながら、ダム建設に反対しなかったのはなぜ?なぜダムの完成を待ち望んだのか?写真の記録はお国のために戦場で散った夫や弟のため、というのは本当の言葉なのか?
 増山さんと交流のあった人たちにたくさん会った。ダム推進派も反対派も増山さんは徳山村の象徴だった。ふるさとは景色の中にあるのではなく、人の心にあることがようやく分かってきた。ダムによってふるさとの人々の心が汚れていくことを一番いやがった増山さんがいたことを忘れていた。増山さんは誰よりも人々の幸せを願った人だった。
 
 
放送内容について